帰農塾 参加者 レポート 
KINOUJUKU SANKASYA REPORT
11月17日〜19日 里山帰農塾 11月コース  秋の山から学ぼう

2006.11.19  更新日 2006.12.7

帰農塾に参加して
S・N 

 開催直前まで迷って参加を決めた帰農塾ですが、思い切って参加して良かったと思っています。農に興味のある人が集まる場所というと定年間近の第二の人生を目指す方が多いのかと思いきや、半分以上が女性、しかも大学生から団塊の世代まで、出身も仕事も様々な十八名+個性豊かなスタッフの皆さん。テレビもネットも見ない三日間でこんなにいろいろなお話ができたことがまず1つ、貴重な経験になりました。たき火、火というものは人を集め、語らせる暖かさがあるのかなと感じました。
 祖父母の世代は農林業をしていて、父母の世代はそれを見聞きしているからできることが、私たちの代になると経験がなくできなくなっている農作業・炭焼きを体験しました。都会でて生活していたら一足飛びに手に入れられる便利さは、途中過程を省略されて目に見えていないだけで、本当は手間がかかっているんですね。農的生活とは手間暮らしという言葉が印象に残りました。
 私は今都会で生活していますが、農的生活に憧れていきなり田舎に移住をしてみるのが解だとは思っていません。しかし、都会にいて消費だけする生活も地に足がついていないようで落ち着かないと思っています。この帰農塾に参加したのは新しい生活の仕方を始める第一歩かなと思います。都会で生活していてもこういう場所に来て、生産の現場を体験し、おいしいものを食べて、仲間と話をする。日ごろの生活も例えばちょこっと手間をかけて自分で作る。そうしたことで自分の暮らしを取り戻せるというか、バランスが取れるような気がします。



西園寺蘭子

 大都会の真ん中にいても世界のはしっこを感じてしまうことがある。そうかと思えば、無人島でも満点の星空の下、世界の中心を感じることが出来る。大阪から5時間以上かけやっとたどり着いた「鴨川自然王国」という場所は、千葉のはしっこでありながら、世界の中心を感じられる、心地よい里山だった。
 私は基本的に、人間とは遊ぶために生まれてきたのではないかと思っている。この世に生を受け、成長し、大人になって新しい命を育み、未来に受けついでいく。真剣な遊びを私たちはずっと繰り返して来たのではなかろうか。そして、その遊びが繰り広げられる舞台も、生の喜びを謳歌できる祝祭空間であるべきなのだと思う。
 その点でいうと、鴨川自然王国では祝祭的な毎日が繰りひろげれていた。種をまき、成長を見守り、収穫し、おいしいご飯をみんなと一緒にいただく。そして夜になると集まってワイワイと杯をかわす。
 私は大学生になって一人暮らしをし、さみしいと感じることが何度もあった。横にどんな人が住んでいるのかも知らなければ、顔を合わせてもあいさつさえしない。今の都会が持ついいようのないさみしさを解決するカギが自然王国にはいっぱいつまっている気がした。


房総丘陵・鴨川上流にて W
フォトン・ベルト 

 結局、2006年の鴨川里山帰農塾の5回中4回に参加してしましました。夏(8月)だけは出ませんでした。夏も参加したかったな、と思う反面、よく性こりもなく、4回も、出たな、とも思います。第一回に出た頃、1年を通し、つまり、四季折々のこの土地の様子、農作業を知るべきだと考え、他の予定の調整が、困難なこともありましたが、何とか、出ました。しかし、2回目以降、何人かいるだろうと思っていた、同期の塾生が他に誰も来ず、(スタッフとして居た大学卒論作成中の松本乙女さんを除いて若干の寂しさ、・・・ものを感じました。今年最後の里山塾も止めるかといろいろ思いが一時でましたが、結局参加してしまいました。そして、それは正解であり、また色々な話を聞き、楽しめ、話の整理の一助になり、満足しています。
 参加者の様々な人生・社会の動向との関り、ゲスト・スピーカーの貴重な、またお可笑しい話。甲斐良治氏の日本のあすの町の農と地域等、極めて価値あるものに接す事ができ、印象な滞在でした。また、トキコさん、ヤエさんの話をすぐ近くで聞け、感激しました。
最後に、ここの風景、素晴らしいですね。つながりを維持して、また、ここに来ようかと思ってます。
 この魅力的な塾をこれからも続けていって欲しい。希望します。


里山帰農塾に参加して
H・S

 私の場合、差程深い意味を持っての参加ではありません。もうすぐ定年という時期を迎えて、以降の生活の変化や広がりに何か得るものが見つかればいいなぁ程度の軽い気持ちでした。2泊3日で土と野菜に触れ楽しい時間を過ごすつもりで来て、ほぼ目的が達せられた感がします。スタッフの皆さん、ありがとうございました。
 農業の経験は全くありませんので、実際に体を動かして手を使っての作業はとても新鮮な体験でした。途中でふと子供の頃は(毎日ではないにしても)こんな暮らしをしていたんだと思い出し、何時にそんな暮らしからずっと離れて生活して来たことに改めて気付かされました。今後の暮らし方を考える上で良い刺激になったと思います。
 農を生業とする計画は持っていませんが、農的な暮らしを心掛けることは出来そうですし、努めて意識しながら考え行動する姿勢を形作って行きたいと考えます。
 何よりも大きな収穫は、若い人たちの希望や熱意や柔軟な考え方に触れる機会を得たことかも知れません。意欲を持ち続けて人生に取り組んで行かれることを期待します。
 テーマである農的な暮らしは、言い換えれば人間的な暮らしという理解をしました。人間的な暮らしを心掛けようと思います。農的であれ漁的であれ山的であれ、難しそうですが、帰農塾の卒業として続けようと考えています。ありがとうございました。

鴨川自然王国 里山帰農塾
紅葉 

初めて参加させて戴き楽しかった。これからも一年のサイクルを見てみたい。
農業体験で色々な方と交流が出来、私としてはうれしかった。特に早生(玉葱)三千本の収穫が楽しみです。毎日家でジム、プール通いしている私にとって別の世界です。
トキコさんのコンサートに行くのが楽しみでしたが、帰農塾を知り、私の第二の人生 一人旅の第一歩だと思って参加しました。
なんとなく「わくわく」してきました。特に炭作りは時間がかかり共同作業と忍耐が必要です。それから、うどん打ち、男性と女性が手足で作る作業は良い体験です。私は家で手伝って協力してもらった事がないので感激です。ピーマン特に赤ピーマンを生で一口食べた。甘い味は多分一生忘れる事が出来ない位美味しかった。良い学びの場が出来たと思います。でも、少し急がしかった。昼間、眠たくなって目を開けているのが大変だった。皆さんについていけない様な気がした。食事は真心がこもっていて、野菜中心で美味しかった。私の生活の参考にして行きたい。これからは健康第一の生活を希望します。
「昔に帰ることではなく自分に帰る」って良い言葉ですね。



R・M 

 私は、公務員であり、二人の小学生の父親でもあります。共働き家庭で土日も忙しい。
 この二泊三日の田舎暮らしは、これまでの多忙な日常を切り取って一度白紙にして、改めて刻んでいく日々でした。
 人と語り合うこと。仕事・家庭・友達などとは違う人間関係の中で過ごす時間は、何か自分で見直すいいきっかけになると思う。
 自然と語り合うこと。私は自然と向き合う時は何も考えていません。これは、スポーツクラブで汗を流している空白感とは違う脳の隅のほうまで澄み渡るすがすがしい気持ちでした。
 これからも私なりにたくさんある選択肢の中の一つとして農と向き合いたい。


帰農塾に参加して
洗いマングース 

 今回、帰農塾に参加して、たくさんの人に出会いました。年も様々、動機も様々でした。だけど、本当、年が上の方からはいろいろ学べて、同年代の人とも「スゴイ」と思うことを色々きけて、楽しかったです。
 藤本敏夫さんの言葉に、大切なものは健康と良い友人だとありますが、今が逆に都会は個人主義になっていて、だからこそ健康と友人のありがたみって大切だと、私は痛切に感じます。
 自然王国は都会から来た人や、地元の人が一緒に作っている、新しいふるさとみたいです。あたたかく、楽しい。
 高野先生が、「今、家からナマの火がなくなっている」と仰っていましたが、ここでの生活は、焚き火のまわりに自然と人が集まってきて、人には火とか、団らんの場がどんなに必要か感じました。
 もしかしたら人は、火とか団らんとか、したくて、でも都会ではできなくなってると思いました。
 ラクと不便は紙一重です。
 ・・・そろそろまとめます。
 都会で地元もなくて、なんとなく漂流してしまっている同志諸君。
 帰農塾に参加してみて下さい。絶対に人生変わります。
 最後に、石田さん、高野さん、甲斐さん、岩田さん、小原さん、スタッフの石井さん、宮田さん、ちょーさん、ミツヲさん、ういちゃん、本当にありがとうございました。
 そして、登紀子さんに、本当にありがとうございました。
 あと、クマさんのなめこ、おいしかったです。届けて下さってありがとうございました。
 棚子、かわいかったです。そして王国の王子様みたいな和麻くんに、スゴくかわいかった。
 また、来てもいいですか?てか、来ます。
 [おまけ] 里山トレビア & 名言集
@ 魔法ビンは魔法のように温度を保つからそういう。
「今ではそんなの当りまえですよねー」
「今は魔法の中で生活している」
 A「キューバは本当に良い国!!」
   「・・・学校でそんなの習わなかった!!」
   「今、それでなくても復習漏れがあるのに・・・」
   知らないって怖い
B フォトン・ベルトの言葉
知っていること、昔してたこと、知らないことはできない。
体で覚えることが大切。
 C夜の会話 in 風の家
  「加藤登紀子さんでドラマをつくりたい!」
 「こんな恋したい!!」「かっこいい」
 話のケッカ→主役は紫咲コウさんと松田龍平さんということになりました。
C MGさんのことば→心が技術においついていない



MG 
 「国民総生産」という経済指標で日本国家の豊かさを計ること。分業。効率性の重視。これらはすべて、かつて人々が理想の社会を目指すために価値を置いてきたものだったと思う。そしてこのような基準に基づいて社会が動くようになり、考えられないような技術の進歩があったし、表面上の豊かさを獲得できたと思う。しかしその中で私達が忘れてしまったものは、理想の社会を作るという本来の目的だったのではないでしょうか。
 今回のこの帰農塾に参加して、現代の企業のあり方に矛盾を感じ病気にまで陥ってしまった人々に出会いました。日本国家の都市の崩壊を声高に唱える人々に出会いました。そして、そのような人々とこの塾を通して仲良くなることができて、私達は現代の便利な社会を理想的であると感じられない原因が、都市の生活の現実感の希薄さにあるのだということを知ることができました。だからみなさん、生きる根本にある食、農というものを見直そうとしていらっしゃるのだなぁと。たしかに都会生活では、食べることが命につながるのだという実感が得られません。自分が口にする食物がどのようなプロセスで自分の手元に来ているのかがまったくわからないし、食について受動的であるしかないからです。そして仕事においてもコンピューターを扱うことが多く、そのコンピューター技術の世界と自分の命がどうつながっているのか知ることが出来ないからです。だから人々は、今現実を知りたいと思っているのだと思います。しかし、現実、生きている実感がほしいから、農業へ、田舎暮らしへという短結思考は、単に現実への逃避であり、それと今生活している環境がどのようなつながりが持てるのかという発想の欠如があると思います。したがってこれからは、現実の生活と、その生活での現実感の希薄さ埋める社会のシステムを構築していくべきだと思います。その一つの契機として今回の帰農塾で得たヒントをこれから自分なりに消化していけたらなぁと思います。


K・I
「こんなことをしたかったんだ」と深々と思いました。二日目の夜です。そう思いました。
 ぽっこりと緑に囲まれた中で、何かに没頭してすごした一日は、子どもの時以来なかったなと。思えば子どもの頃の日々は、こんな感じがしたことがもっと沢山あったなと。そして夜、清澄の山並みを遠くに、豪勢な焚火を囲んでの大人に戻っての語らい。こんないい日をすごせただけでも参加した価値は充分というものです。
 これだけの体験をさせて下さる基盤づくりに傾けられた情熱と労力、そして塾の運営をして下さる方々の陰のエネルギーを思うと、身のひきしまる思いがします。が、一方で藤本さんの想いを語る登紀子さん、大山千枚田を前に語る石田さん、全国の様々なところで農とのかかわりの中で生き生きと楽しそうに何かを生み出している人々がいることを知ってとてもうれしく、私まで胸ふくらむ思いをしました。そんな喜びの輪の中に、どんな形でか、自分も加えていただきたいなと、私の農への関心も、社会的な広がりが持てたようです。
 存在はずっと以前から知ってはいた鴨川自然王国、今回偶然のように参加してみて本当によかったと想っています。感謝です


帰農塾に参加して
H・I 

自然王国が国王の藤本様亡き後は、どの様に運営されているのだろうかと思いで今回のセミナーに参加させていただきました。
 鴨川の駅で、思いもよらぬ登紀子さんのお出迎えを受け大感激致しました。
 王国に到着し、美しく又きちんと隅々まで手入れのゆき届いた農園を拝見し、素晴らしい後継者の方々が、育っているのだと確信致しました。
 その後の二泊三日の王国での生活は感動の連続でございました。
 特に二十代から三十代にかけて若い方々の自己紹介の時のおひとりおひとりのコメントには、目を見張る思いでございました。
今の世の中の動きを適格に捉えきちんと自分の意見をお持ちでいることは、頼もしい限りです。蒔き割り炭焼き、玉ネギの苗植えとスタッフの方々の真剣でなおかつやさしさを感じつつの心楽しい体験でございました。心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。


田舎暮らしの楽しさを再発見
T・S

 田舎に暮らしていると、自分の地域の良さを忘れていますね。今回この帰農塾に参加して、これからの生きて行きかたが決まった気がします。甲斐先生のお話は感動的でした。「建物・田舎・人・素材を見捨てない」納得でした。先祖の残した家を守り、ご近所のおばあちゃんと立ち話をする。季節毎に一杯採れる野菜で手間・暇かけ料理を作る。日頃当り前の様にやっている事が大切なんだと思いました。若い人達は将来の事を深く考えていてしっかりしてます。教えられる事ばかりでした。「二十代に考えていた事が将来を決める」登紀子さんの熱い言葉に、人生の深さを感じました。こんな年寄りにはなりたくないと言われない様にしないといけませんね。団塊世代は数の多い分、いつでも話題の的になります。楽しく生きている人の所には楽しい人が集まります。世代に関係なく人々と仲良くしながら今回の塾での経験を生かし、田舎暮らしを続けて行きたいと思います。帰ったら登紀子さん自慢を思いっきりします。
 本当にありがとうございました。


「三日間の里山生活を終えて」
T・Y 

 僕が里山の生活の中で最も驚いたのは、赤く熟れたピーマンの甘さと地元の食材を使った料理の美味しさでした。
 帰農塾3日目。ピーマンの収穫をした時のこと、塾生の一人が赤いピーマンを食べて一言「甘い。」と言っているのを聞きました。半信半疑で一口かじってみると本当に甘い。フルーツのような瑞々しい甘さが口の中に広がりました。ピーマンが甘いなんて知らなかったし、例え本などから知識を得ていたとしても実際に食べてみなければ、あの味を感じることはできなかったと思います。
 もう一つ、毎日3食いただいた食事が本当に美味しかった。白く立ちのぼる湯気や調理場からの食欲をかきたてる匂い。そしてその土地で摂れたものをその土地の中で多くの人たちと囲んで食べる。こういったことがあれほど幸せで嬉しいことだとは思ってもいませんでした。旬のものを食べよ、とか地産地消とか様々な所でスローガンのように見聞きしますが、何のことはない、その方が美味しいし体が喜ぶということなのですね。
 このように書くと食べることばかりかと言われそうですが、講義では頭を使い、炭焼きや玉ねぎの定植では全身を使い、年齢も職業も違う様々な人たちと話して、寒くなったら焚き火で暖をとる。そんな五感をフルに使った生活の中だからこそ、料理もまた格別に美味しく感じたのだと思います。今まで食や農について本の知識だけを元に頭の中であれやこれやと考えてきましたが、実際の場に一歩足を踏み出してみることで、本で読んだ何倍ものことを体感できるのだと気付かされました。参加して本当に良かったです。今回の帰農塾をきっかけに今後、もっと色々な場に自分から入っていき、知識や経験、考え方を豊かにしていきたいと思います。三日間、本当にありがとうございました。


里山帰農塾 11月コース 「秋の山から学ぼう」  感想
A・S

 私は今回、次の二つの大きな目的の為に、この里山帰農塾に参加した。第一に、そもそも農業・農的暮らしとはどういうものなのかを実体験する為。そしてもう一つは、将来、故郷青森で政治家になるという志を持っているので、農業、観光による地域づくり、地域の活性化をどのようにしていくかのヒントを得る為であった。今回のコースを終えて、その目的はほぼ達成できたと思う。特に、座学の講演や、色々な場での交流の中で、地域づくりに関しては、多くのヒント、きっかけ、出会いがあったと思っている。
石田さんのお話の中で、都市農村間交流が重要なのは、地元の人には見えないもの(地域の良さ)を都会の人が気づかせてくれるから。地域にある暮らし、財産をどのようにして活かすか、都会の人との交流から見つけていくことが可能という言葉があった。全く納得であった。私が現在、大学院で指導いただいている前三重県知事の北川正恭先生も、「地域づくりは、無いものねだりではなく、あるもの探し」とよく言われる。同じような考え方であると受け止めた。地域のあるもの探しを、地域の人だけではなく、都会の人といった第三者にも参加してもらいながら行なっていくことの重要性を強く感じた。地域に、都会の人、交流者という新しい風が入ることにより、確実に地域に気づきと、それによる変化が起き、地域は思わぬ方向に動き始める。それが地域の活性化の始まりなのだと思う、鴨川自然王国が示しているように、そうした「場」を上手く作れば、地域の活性化は絶対に可能である。そのように感じた。
高野さんのお話の中には、日本は古来よりずっと地方分権の国。明治以降の100年が唯一の中央集権の時代であり、これからは、江戸時代のようなゆるやかな分権体制、落ち着いたしなやかな日本本来の姿、土に根ざした自然と共生した本来の暮らしぶりに戻す必要があるとの言葉があった。また、甲斐さんのお話には、戦後の田舎の多くの学校は、戦後の混乱期で国が何も出来なかったので、村の土地に、村の木を使い、村の人の手で作られた、つまり、学校は地域の人たちが自ら立てた。それが自治であり、学校は自治の拠点であったという言葉があった。「地方分権」と「自治」は、私が大学院で研究している大きなテーマの一つである。非常に参考になるお話であった。現在の日本の停滞の大きな原因は、政治家の責任であり、官僚の責任であるが、それと同じぐらい、国民にも責任がある。戦後長い期間、分権や自治といった意識を忘れ、日本の国民はお任せ民主主義、陳情・要求民主主義になってしまっていた。もう一度、古き良き日本の農村が持っていた、分権自治の精神に立ち戻る必要性を感じた。
今回の帰農塾では、何よりも、地域づくりのスタートが、地域のあるもの探しであることが、良く分かった。そして、その地域のあるもの探しとは、その探す宝を歴史や文化だけには限定しな。それは、人、モノ、ネットワーク、そしてそれらを組み合わせるマネジメント能力までも含めて考えるものである。そして見つけ出した宝を徹底的に磨く。甲斐さんが、お話しの中の最後でおっしゃっていた、「ここは何も無いところと考えることは、地域の認知症」という言葉を肝に銘じて、地域(青森)のあるもの探し、それを徹底的に磨いていく。そんな活動をする政治家になりたい。
最後に、石田さん以下、鴨川自然王国のスタッフの皆さん、登紀子さん、高野さん、甲斐さん、岩田さん、良い機会と出会い、学びを提供いただきありがとうございました。感謝しています。また、必ず遊びに来ます。その時まで皆さんお元気で。


帰農塾参加のきっかけ
T・N

 日々の激務、日々の生活、身のまわりの世界しか見えず、ひたすら個の中の問題に埋没する中で、うつという病気になったのは、昨年の今頃のことでした。その後4か月ほど休職し、薬物療法の力を借りて、会社に復帰することはできました。ただ、休んだ4か月の中で、自分で内的に何か変化したことはなく、会社に戻ればまた同じ毎日が続くわけで、薬や頼ることしかできない自分に情けなさを感じていました。しかも、自分の中ではまわりの人に、今回の病気では何も迷惑をかけていない、自分だけが苦しいんだと勝手に思っていました。しかし最近になって、会社の人や身の辺りの人に、自分が実は依存して生きていることに気付き、知らぬ間に他人にも負担をかけていたのだと思い、さらに自分が情けなく思える毎日でした。そんな中で、友人に、「身のまわりだけなく、違うNさんがいる世界とは違う世界があることを知れば、少しは楽になるのでは」とアドバイスをもらいました。
 その時にサイト上で里山帰農塾があるのを知りました。サイトを調べると帰農塾を実施しているのが鴨川自然王国であり、藤本さんが元々この王国を作った方だと知りました。藤本さんの事はよくは知らなかったのですが、大学時代にちょっとした社会運動をしていたことがあり、その時にお名前だけは何度か耳にしていました。最終的に自分達がやっていた大学内での小さな運動は、先生達によって潰されてしまったのですが、自分の中での挫折感は大きく、その後に人生にもマイナス面を残したように思います。
 社会運動と社会人との生活を両立している先輩もいましたが、自分は完全にその逆で、そういったことから逃げている中で、現在はIT業界に流れつき、激務に身を埋没させ、最後は自分を見失い病気になってしまったのかも知れません。
 藤本さんのことはよく知らないのですが、学生運動に、ある意味、挫折され、鴨川自然王国を設立したこと、その王国が運営している帰農塾に参加するということは、自分が見えなくなっていた世界を再び見させてくれる場ではないのかと思ったのです。
 結果として参加して大正解だったと思います。鴨川の自然の中で過ごした日々は、いつもの自分とは完全に違っていました。二日目に少し体調を崩しましたが、東京にいるときはそれで一日ダメになってしまうことも多いのですが、少し睡眠をとっただけですぐに回復しました。環境の違いって大きいのですね。
最初は農的生活と言うより、今いる自分の世界と違うものを見たい、若かった頃の生きる情熱を取り戻したいとの思いで参加した帰農塾でしたが、週末帰農も含め、帰農について真剣に考えるようになりました。生きる情熱も再びわき上がってきたように思います。
講師の先生、スタッフの皆様、そして同期生の皆さん、本当にありがとうございました。また鴨川に帰ります。



帰農塾で感じたこと
K・M

 帰農塾での三日間、体と心で感じたことがたくさんありました。まず第一に食事。王国で育った取れ立て野菜をふんだんに使ったお料理は、味がぎゅっと詰まっていて本当に美味しかったです。普段、食材を意識することなどほとんどありませんが、「私は食物にいかされているんだ」と改めて感謝し、本当に幸せな気持ちになりました。
 そして、うどん打ち、炭作り、苗植えなどの体験は、人と協力し体を動かして作業する楽しさを感じさせてくれました。
 うどん打ちでは、例えうまくできなくても笑ってくれる人がいると楽しい気持ちになり、みんなで作ったうどんはより美味しく感じられました。炭作りの際のうちわで扇ぐ単純な作業も、二〜三人でやると自然と会話が生まれ、白い煙がモクモク出るとみんなで喜びました。玉ねぎの苗植えは雨の中での作業でしたが、みんなでやると楽しかったです。苗を土で包むたび、「大きくなれよ」と本当に大切なものを扱う気持ちになりました。
 昔は、村ごと協力して行う作業や行事がたくさんあったといいます。声をかけ合いながら、笑いながら、大変ながらも楽しく、今回の帰農塾のように色々な年代の人が集まって話すことで、自然と文化の継承や豊かな心が育まれていたのだと思うと、現代こうした場がなくなっていることに寂しくなりました。
 つぎに、座学では今の食や自然の危機的状況を改めて知り、色々考えさせられました。その中で私が感じたのは、地域と人を結ぶ必要性です。今、地方で消えそうになっている文化を生かして頑張っている人たちはたくさんいます。しかし、その活動は発信するにとどまり、例えば都会の人や若者につなげる所にまで至っていないことが多いのではないかと思い、今回の帰農塾で人とのつながりは素晴らしいものであると感じた私は、いつか自らの技術を生かし地域と人をつなげる活動ができたら良いなと考えました。田舎には良いものや人がたくさんあることを伝え、それぞれが本当に良いものに気付くことで日常は大きく変わり、豊かな生活につながっていくのではないかと思います。
 最後に、今回加藤登紀子さんと三日間過ごせて本当に嬉しかったです。お話して下さったことは、今の私にとっても大きな言葉ばかりでした。ありがとうございました。


里山帰農塾(11月コース)に参加して
Y・B

 モノを一から作るということ。山から学ぶということ。現在の私の生活にはないことでしたので、こちらでの三日間は、日常を立ち止まって考えることの出来た、非常に刺激を受けることの出来た有意義な三日間でした。
 今回は農的な田舎暮らしの実践として、薪作り・炭焼きやうどん作り等を体験させて頂きましたが、共に作業する楽しさや作業後の仲間との食事の美味しさ、食事後の焚き火を囲んでの語らい、何とも言えない充実感を感じました。
 改めて自分の生活を振り返ると、忙しさに感けてコンビニやデパ地下で既に調理済みの食品を仕事帰りに買い、家に帰ってテレビやエアコンをつけて一人食事をするという日々です。何も考えることなく、これが当たり前の生活でした。
今回の作る体験によって「全て自給する!」なとどは言えませんが、少なくとも、モノを買う時の見る目やモノへの有難さの気持ちは変わったように思います。
 1日目の夜、自然王国近くに住む小熊さんという方(熊さん)が、いっぱいの差し入れを持って来てくれました。みかんから始まり、きのこ、切花、鮮魚、等々。「これはさっき貰ったものだけど・・・」などと満面の笑みで、荷物を積んだ車へ何度も往復しながら運び入れて下さいました。初めて会う私たちの為にわざわざ持ってきてくれたことに加え、モノを分け合ったり交換したりというコミュニティが、今も東京に程近い場所で存在することに、心温かくさせられました。
 高野さんのお話の中で「里山には人間の本質が詰まっている」という言葉があり感銘を受けましたが、熊さんからも「里山(人とのつながり)」について学ばせて頂きました。
 このような温かい里山が鴨川にあることを、東京に戻って周りの友人や仲間に伝えたいと思います。そしてまた、自然王国に遊びに来たいと思います。
最後に、スタッフの皆様方、座学の諸先生方に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。



里山帰農塾に参加して
F・N

鴨川自然王国での3日間は本当に楽しかった、おいしかった。山と棚田を眺め人と語らいながら旬の素材を食べるおいしさと言ったら(スタッフの皆様に感謝!!)。もう、いつもの1.5倍は食べたと思う。食べる喜び、これは素朴に生きる喜びにつながっている。動機も心情も異なる人たちが、たまたまこの時期ここに集まり、食を共にして、宿を共にして、一緒に学び合ったひとときを、その縁をとても貴重に思う。皆パーソナリティ豊かで、人は一人ひとり違うということをそんな当たり前のことを改めて実感した。自然の中に立つと、結構その人のあるがままの姿が出てくるから面白い。特に都会でのっぺらぼうになってしまったと感じる人には、目と鼻と口を、つまり自身を取り戻す場所として、「ここ」を体験するのはいいんじゃないかな。それは切り取られた「時間」かもしれないが、何かのきっかけ、スタートにはなるのではと思う。
帰農塾で楽しかったことは山ほどあるが、二つ三つ挙げるなら、炭焼きは初めての体験で、一つ一つが理に叶っていて、成程、へえ!とひとり小さく感嘆していた。それにしても、炭をつくるのに、これだけの木を切る必要があり、これだけの工程を踏む必要があるのか、ということを見学して知るのではなく、ちょこっとずつでも実際に自分の手をつかって、薪を入れたり、土をかけたり、団扇で扇いだりして体験できるのは有り難い。私は地元で市民農園を借りて野菜作りをしているのだけど、種から食卓に食材として載るまでの過程を知ること、本ではなく自身の手が知ることはとても大事と実感している。初めて斧を持ち、薪を割った。真ん中に振り下ろし、真っ二つに割るのは難しい。もう割れないかとあきらめかけたけど、根気よくコツを教えてもらい、達成できたときは嬉しかったな。炭ができると煙が透明になるとは、なんだか詩的だ。
それから焚き火。ずっと忘れていたけど、焚き火はいいですね。自然とそこに人が集まり、自然と会話が生まれ、心身共にあったかい。加藤登紀子さんがギターを手に唄ってくれた。皆思い思いに耳を傾け、人と自然が調和する、居心地がいい、もったいないような空間だった。
野菜の一つでも自身で作れるようになりたい、一年程前、軽い気持ちで始めた家庭菜園は想像以上の喜びと発見と新しいライススタイルを意識する始まりだった。私の力ではない、多くは天の恵み、命の循環、そういうことを土に触れる事で実感できる。忙しい中でも歌うように楽しむ農的生活、これは今起きている様々な問題、いじめ、うつ、自殺、広く言えば戦争、貧困、環境破壊など数珠つながりの諸問題を解消させるキーになるのでは、と、私は本気で思っている。
鴨川自然王国には素敵な人が集まってくる。本来み〜んな持っている素敵なところが表れてくる。また、今度は友だちにも声を掛けて、訪れたいなと思います。
飄々と活き活きと魅力的だった講師の皆様、スタッフの皆様、塾生の皆様に感謝を込めて。



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