EVENT REPORT

5月25日-27日 里山帰農塾 春 〜実りを描く〜REPORT
 
2007.5.25-27  更新日 2007.6.13 text:宮田 武宏


2007年度、最初の帰農塾が始まりました。2007年から団塊世代の大量退職。その足は田舎へ向う−さあ、全国の団塊世代よ立ち上がれ!・・・という高らかな呼び声をききつつ、今回は男4人女4人の計8人。その内団塊世代に近い方は二人でした。

ずっと田舎で暮らしてきて、田舎の暮らしにくさも知りつつ、そこから何かをやれないかと思う50代の男性、団塊世代と、そのジュニア世代の間に挟まれながら、県庁職員を続ける40代男性から、専業農家で食べて行こうとしている30代夫婦、素敵な暮らしをしたいと考えている20代、30代の女性まで、参加者の思いは色々です。

 里山帰農塾は、こんな参加者の思いにどう答えるのでしょうか?

自己紹介の後は、昼食を食べて高野さんの講義です。今年度は、高野さんの講義は4回分、テーマを変えて話されます。一回目の今回は、「マルチアイデンティティな人生戦略の設計」というタイトルで行われました。

以下の文章[http://www.smn.co.jp/insider/takano/takano-semi02.pdf]にある、高野さんのマインドマップ(心象曼荼羅)をもとに話は進んでいきました。従来の日本なら、人生の中心に会社を置いて生きてきていた。しかし、それはちがう。人生の中心は自分だ。自分が太陽になるのだ。自分にどれだけのつながりがあるか、ということが豊かさの指標だ。

自分の持つ関係を絵にしてみる、というのは中々面白そうです。私もちょっとやってみたくなりました。

  夕食の後、木下さんの講義です。木下さんは、55歳のとき、人生を真剣に考えたそうです。 自分の人生、このままでいいのか?どんな風に生きて行きたいのか?それからは日曜ドライブで奥さんと土地探し。やっと見つけた土地に家を建て、定年が来てからは悠々自適の生活を送っておられます。そんな木下さんは、田舎暮らしには遊び心と体力が必要だといいます。自分で工夫する遊び心、それを実行するだけの体力。単純なことですが、真理だと思いました。目的を持って生きることも重要ですが、その目的をしゃにむに追うのではなく、遊び心と体力で軽やかに乗り切っていくのも楽しそうだな、と感じるからです。何より、そう話している木下さんの笑顔はあまりにも楽しそうです。笑顔が、全てを
物語っています。

 二日目の朝は、田植えです。石田さんの田んぼに、もち米の苗を植えます。ヒモを張って、そのヒモに沿って植えていく。何人か経験者がおられましたが、ほとんどは初めて。最初はしんどかったけど、やりなれると楽しい!といった感じでもりあがりました。これから、この田んぼを草取りして、稲刈りして、というようにお世話してゆきます。ちなみに、参加者は去年のこの時期より少ないのに、2倍の面積を植えてしまいました。ナゼ?

 昼食後は豆腐作りです。石田さんの指導に従い、協力し合って作ります。ざる豆腐も作りました。作っているときの皆さんの笑顔はとても楽しそうでした。
 豆腐作りを終えると、増刊現代農業編集主幹の甲斐さんの講義です。「あきらめてはいけないことがあり、失ってはいけないことがある」をコンセプトにする鳴子の米プロジェクト[参考:鳴子温泉郷ツーリズム]を題材にして、講義は進められました。米価1万2千円を切ろうとしている中、一俵2万4千円で鳴子のお米を販売しよう!というのです。これを高いと見るのか?それとも違う考え方があるのか?このプロジェクトには、ドラマが在ります。内容についてはこのスペースでは書ききれませんので、
興味のある方はこちらの、「農文協の主張」をご覧下さい。 
今回の講義の中では、「半商品」という考え方が提示されました。「半商品」とは、商品として流通はしているが、それをつくる過程や生産者と消費者との関係には、経済合理主義が必ずしも貫徹していない商品のことをいいます。買い手が値段と品質とを比較して選ぶのではなく、「この農家の米なら」「この地域の米なら」と買う場合も「半商品」といえます。これを進めると、「商品を半商品に変えていく面白さ、市場経済を内部から空洞化させる可能性」があるというのです。その実現の一過程が、鳴子の米プロジェクトなのでしょう。甲斐さんの講義は、深く、激しく、初めて聴いた人は圧倒されてしまうかもしれませんが、参加者の胸に暑い思いを呼び起こしたことだけは間違いないと思います。

夜の交流会の前には、ちょうど千枚田で行われていた棚田の灯りを見に行きました。 棚田の明かりには、近くの竹山から切ってきた竹にBDF(てんぷら油から作られたディーゼルオイル)を入れて明かりをともします。幻想的な風景がとてもきれいでした。交流会では、王国野菜をふんだんに使った料理と、やっと出てきたお酒で盛り上がりました。 

  最終日の朝は、畑作業です。今回は、カボチャ、ズッキーニ定植を行いました。皆さんの印象はやはり、「なんて畑なんだ ! 土がガチガチじゃないか。」そうです。王国の畑はこんなにがちがちなんです。でも、この土地でがんばって野菜のお世話をしてゆこうとしているのです。そして、ここから生み出される野菜のおいしさを、皆さんに味わってもらいたいと考えています。こんなことを考えながら皆さんとともに作業をしました。夏野菜の生長はこれからです。帰農塾に続けて参加される皆さんはずっとこの成長を間近で見られるのですね。

 今回の帰農塾では、自分の五感が開いたようだった、余裕を持って、自分に入ってくるいろんな感覚を楽しみたい、と言った女性がいました。また、機嫌よく、前向きに、心豊かに生きてゆこうと言った女性もいて、暮らしに関わるテーマを見つけられたようでした。専業農家になりたい、という思いを強めた方、地元での活動をさらに充実させたいと決意を語られた方、これからが始まりです。

 里山帰農塾は、そんな皆さんを応援、サポートしていきたいです。





























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